かざみきもの学院
トップ 学院長 本校 松山校 万華鏡 イベント アルバム

<2010年10月>

 

彼岸花

学院長 先日、毎朝早朝ジョギングをしている友人から電話がありました。「元気?・・中略・・毎年今頃一面に咲いている彼岸花が全然咲いていない・・・」
ちょうどこの日、テレビからも、赤い絨毯を敷き詰めたような彼岸花を見に大勢の人が訪れるという名所も咲いていなくてがっかりしている人達の情景が流れました。
何かでこんな文を見たことがあります。「突然土手を真っ赤に染めるヒガンバナは恐ろしいほど美しく、ある人はそこに極楽を感じ、ある人は地獄を感じる・・・」
子供の頃から、きれいだけれど、摘んではいけない、何か不思議な感じの花でした。

 それは、お彼岸の頃お墓の近くに血のように赤い花が突然咲くので、「死人花」「幽霊花」「地獄花」などと呼ばれ、また「火事花」と言って、家に持って帰ると火事になるという迷信もあり、日本では不吉、忌み嫌われることもありました。
私も前々から気になっていました。大人になって色々なところから聞くので大体のことは分かっていましたが、まだはっきりしないところもあって少し調べてみました。

 ヒガンバナは、中国から稲作に伴って日本に入り、田んぼの畦に植えました。毒があり、ネズミ モグラ 虫等が毒を嫌って寄り付かないように、ということです。田んぼの畦をモグラやネズミが穴をあけ、壊して水が流れてしまうのを防ぐこと、またお墓の周りに咲くのは、昔土葬にしていた頃、動物に堀荒らされないようにと植えた先人の知恵だったようです。
「彼岸」は、亡くなってから、生死の間を迷い、河、海にたとえた、その向こう岸のこと、悟りの境地を言いますが、それらのことから死を連想する色々な名前がついたようです。別名方言で、呼び名は200とも、1000とも言われています。

 子供の頃摘んではいけないといわれていたのは、そういう意味と、花茎の汁に毒があってかぶれることもあり、小さい子がその手を口に入れないようにということだったようです。ただこの毒は、水に溶けるので、水にさらすと落ちるからあまり気にすることはないとも言われています。
球根には良質の澱粉があり、中国のある地方で、日照りが続き飢餓で苦しんでいた時、蔵に沢山蓄えていたヒガンバナを食べて生きのびたというお話や、日本でもそういうことがありました。
また、この澱粉で糊を作り着物の虫除けの糊付けにしたり、湿布薬等にも利用したとのことです。

 ヒガンバナはリコリス(ギリシャ神話の海の女神)と言い、西洋ではレッドスパイダーリリーと呼ばれ、美しい花として黄色白色等も合わせて大切にされています。
ヒガンバナは花が終わってから葉が出てくるのも特徴の一つです。韓国では、花と葉が同時に出ることはないので、「葉は花を思い、花は葉を思う」という意味で「相思華」というロマンチックな名前がついています。

 日本でも不吉なものと言いながらその美しさに、「彼岸花」とは呼ばず「曼珠沙華」(まんじゅしゃげ)(まんじゅしゃか)ときれいな言葉で呼び、歌にもなっています。「山口百恵さんの歌、そして古くは「赤い花なら曼珠沙華 オランダ屋敷に雨が降る・・・」
今では一面に咲くヒガンバナを見に多くの人が集まる名所もあって、黄色白色も見られるようになり、昔とは大分変わってきたようです。

 猛暑の長い夏が終わり、遅ればせながら、今年も彼岸花の咲く季節になりました。

バックナンバーはこちら

渡部捷子

渡部捷子へのメールは watanabe@kazami.com まで

 
▲このページのTOPへ
©2005 かざみきもの学院