かざみきもの学院
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<2016年5月>

 

「かざみだより」 から思う着付け指導

 3月6日、松山校の「20周年感謝の集い」を行いました。松山校は年2回 「かざみだより」 を発行していますが、今回は、このことが中心になりました。その中で毎回、数人の人のコメントを載せているのですが、今回、特にそこから感じるものがありました。
以前半年ほど受講された方が、コメントで、「先生の教え方は曖昧なところがなく、論理的でわかりやすく・・・」 とありました。ふり返ってみると、これまでにも他の人達からも同じような表現がありました。私は特に意識をしているわけではありませんし、指導とはそういうものだと思っていましたが、今回このことがきっかけになり、師範・講師研究会での、着付け指導で大切なこととして改めて話しました。

 無意識にしていることにも理由があり、大切なことがあります。着付けはプロセスだけではなく、大切なコツを教えますが、その時、なぜそうするのかを分かりやすく丁寧に教えます。それは、何でも教わったことは年数が経てば忘れることもありますが、『なぜそうするか、その時理解できて自分の物にしていれば、必ずそこから自分で考え思い出すことができる』 ものです。このことは広くすべてのことに言えると思います。

 「着付士」 プロ養成の方もその意味では同じことです。すぐに振袖の変わり結びへと向かいがちですが、それは基本が分かってからです。着せたことのある人でも、着付士プロ科は、紐さばき、帯さばきから始めます。体についていて苦しくない紐の結び方、帯の巻き方締め方のコツ、そのために帯を持つ位置、自分の立ち位置等・・・。それから基本の帯結び数種と、ひだのとり方、アレンジの仕方へと進みます。帯結びはその方の体型、帯の長さ・厚さ等を考え、自分でアレンジできるようにと進めていきます。
実際の着付けの中で、成人式等では、事前に必要な物を伝えておいても、色々なことがあります。プロはどんな状況でも対応していかなくてはいけません。また、大勢着せる時は、早さが求められます。何かがあった時はすべて自分で即座に判断し対処しなければいけません。変わり結びの数を沢山知っているだけではいい着付けはできません。

 松山校開校の前、群馬に居る時、本校とは別に近くのある学園 (企業の中の学園) で、きもの着付科を担当していました。始めは 1クラスでしたが、3クラスになり、毎週 3回、自分の教室の他に、そちらの授業もする生活が長く続きました。決まった補助講師とは別に、かざみで講師資格のある人から、インターン希望者を入れて進めました。基礎コース半年、専門コース半年と決まっていましたので、カリキュラムの作成ができて、1年終了の前には、簡単なショーも毎年行い、私の中では納得できる教室になりました。

 松山に移動してからも、外部からの出張講習の依頼がありました。1回の所、2回の所、色々です。一番難しいのは、こういうところです。大勢の人を、教えることができても確認ができない。こういうところは、担当の方と打合せをしっかりすることが何より大切です。人数はもちろん、どういう集まりか、大体着られる人、初めての人、年齢層など。1回の場合は、特に何を教えてほしいのか詳しく。打合せをしている間に、当日の講習風景が予測として見えてきます。補助講師を何人用意すればいいかも決まってきます。けれども、できる限りの体制で臨んでも、やはり心残りがあります。何故なら、色々な方がおられ、同じ指導の仕方では、みんなそれぞれ理解・納得、そしてできるようになったかすべての人の確認ができない。仕方ないと言えばそれまでですが、このことは私の課題でもあります。

 学院では、現在、着物関係の所に居て着付けも少しはできる状態で入学された方がおられます。自分で結婚式場等で着付けをするようになったので、「基本から」 との希望があり、現在進めております。着付けの仕事のあった後は必ず報告をしてくれます。先日留袖をお着せした方が、「きれいに着せていただいて、体に付いていて楽で、気持ちよかった」 と言って下さったと報告がありました。また、ある時何か頼まれた時、まだできないのでとお断りをしたとのことです。できることとできないことをはっきり言えること、そして、そこに向かうことは、自分のすることに責任を持つ人であり、この人は伸びる人だと思っています。

 また、松山から高松に引っ越しした方が、何年かして、講師資格を取得したいと現在通っておられます。この方の熱意はしっかり受けとめ、応えたいと思っています。

 もうお一人。以前の生徒さんのお嬢さんで、アメリカ在住の方がお子さん連れで日本に帰っていて、先日の感謝の集いに出席されました。この時、学院が全国きもの指導者協会総会開催校として県民文化会館で行ったきものショーの動画ダイジェスト版を上映しました。この方は、アメリカでも色々な面で着物にかかわっている方で、「かざみだより」 にコメントを載せていただきましたが、基本着付け、目隠し着付、早着せ等を見て感動されたとのこと。6月まで日本に居るので、基本から教えてほしいと、現在熱心に通っておられます。

 時間その他、制限がある中で、それでも受講したい強い気持ちのある方には、できる限り考慮して、特別枠の指導にも力を入れたいと思っています。そういう方からは熱いものが伝わってきます。着物が着られるようになるだけではなく、技術を磨いて上へ上へと伸びていこうとしている方は、ぞれぞれの分野で必ず着物の素晴らしさを広く伝えていってくれると信じ、私自身の役割も改めて自覚しているところです。

※ 『かざみだより』 H28.4 月号はこちら から。

 ゴールデンウイークに山形へ行ってきました。田植えを待つ広く続く田んぼと、残雪の鳥海山の調和がとても美しく感動しました。


バックナンバーはこちら (毎月5日更新)

渡部捷子

渡部捷子へのメールは watanabe@kazami.com まで

 
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