かざみきもの学院
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<2017年4月>

 

師匠と弟子

 先日、京都 西陣織職人の方がツイッターで弟子募集をしたことで、「求人条件がひどすぎる」 「ブラック企業以下」 等、炎上状態になったことを知りました。
その内容は 『西陣織を習いたい、将来的に仕事にしたい方を募集します。ただし最初の半年は 給与的なものも出せませんし、その後の仕事の保証はできません。ただ、この西陣織の職人が減りゆくなか、将来的に技術を覚えておきたい方に無料で教授いたします』 とありました。できる人が高齢化していく中、今後のことを考えると若い人に伝え、守っていかなければという考え方は理解できます。その方法がツイッターなのかどうかは思うところがあります。この件はまたの機会に。 このことはテレビの番組でも取り上げていました。 「他の世界でも沢山ある。相撲界 芸能界・・・・・」 その道で手伝いながら見て覚える。現場を見ることができる。等々、お話が続いていました。

 その少し後に、ちょうど別の番組で落語の師匠と弟子のことがありました。途中から観たので詳細は分かりませんが、新入り弟子に先輩が教えていたのだと思います。 
「師匠が高座に上がっている時は用がなければ袖で見ているといい。師匠の目が動いているだろう。初めにその会場の様子を確かめている」 ということを話していました。落語は 「マクラ 本編 オチ」 から構成されていて、マクラの所では、いわば導入ともいえる、挨拶、自己紹介、お礼の言葉、時事に軽くふれ、観客をある程度ほぐしながら、客席全体を見て、今日のお客様がどういう人達が多いかつかんで、初めに反応を見ている。その人達に合わせて話し方も変えていく。ここまでの説明はありませんでしたが、それまでどうしていいか不安そうだったその人の表情 (目力) が変わってきたことに気づきました。

 お話は変わりますが、かざみきもの学院では、長い間、本校、松山校共、毎年2回、着物のつどいを行ってきました。今年も 2月26日本校、3月12日松山校で、それぞれいつものホテルで行いました。特別の 「〇〇周年」 来賓をお招きしての会ではないので、自由に、着物の格は関係なく、着たいものを着て集まり、楽しく過ごしてほしいと思っています。毎年その中に、ミニショーか、短時間でできる着物に関するアドバイス等を入れています。
松山校ではそれが終わると 『かざみ便り』 を発行しています。その中で担当者が、何人かにコメントを頼んでいるようです。目を通してほしいとメールで添付されたものの中から1人の文を、ここでも取り上げてみたいと思います。

「私が着物を習いはじめた理由は、外国人の彼 (ドイツ人) に会いに初めての海外旅行へ行ったことがきっかけでした。ドイツにつくと彼の家族から日本について沢山質問されました。質問に答えているうちに、私は日本人でありながら日本について何も知らないことに気が付きました。
それから日本に帰って、着付けや生花を習いはじめました。着付けを習いはじめた頃は、「着れればいいかな」 くらいの気持ちでいましたが、学院長先生の熱心な教えを受けているうちに、綺麗に着てこそ着物の本来の美しさがあらわれるのだと感じてきたのです。そのうち心を入れ替えて習うようになり、いつしか着物を着る楽しさに魅了されていました。今では次は何を着て練習しようかなと楽しんでいます。
着物の楽しさを教えてくれた学院長先生や、着物を習う上でお世話になった方々へ感謝申しあげます。これから私はドイツへ行きます。向こうで着物の美しさを伝えられるよう頑張りたいと思います。ありがとうございました。(かざみ便りコメントより)

 遠く北海道から松山の愛媛大学に入学し、同世代の人だけではなく、色々な面で人と出会い、彼女の明るく前向きで頑張り屋の人柄が、何人もの大人の女性に好感を持たれ、着物をいただいたりしたようです。着ることだけではなく、着物と長じゅばんの寸法の関係、手入れ保存のこと等、特に力を入れたつもりです。御本人が気付いているように回数を重ねるにつれ、初めの頃と表情も変わりました。これは、前述の落語家の弟子の 「目力」 の変化に通じるものがあります。着付けもしっかり勉強して、無事、指導員試験も合格しました。その後も、大学卒業式前日まで教室に来て、着物大好き女子になって、彼と一緒に日本を離れました。

 この道を歩いてきた中で、大勢の人を一緒に、補助講師の力を借りて教えていた時期がありました。あれから長い年月が過ぎました。そして今 『今だからできる自分の役割』 を改めて感じているところです。
4月1日、また、しっかり目標を持った別の人が入学されました。

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渡部捷子

渡部捷子へのメールは watanabe@kazami.com まで

 
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