かざみきもの学院
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<2018年9月>

 

指導するということ

 これまでの自分の行動を考えてみると、はっきりした考えもなく、背中を押されるように、歩き、走っていたように思います。以前はどちらかというと石橋をたたいて、さらにもう一度考えるタイプでしたが、何時の頃からこうなったかはまだはっきりしません。

 ある時、編み物教室をしている友人から、東京での1日着付け講習会のお誘いを受け、参加したのがきっかけです。友人はその時きりでしたが、私は以前から思っていたので、その時教わった東京の先生の所へ通うようになりました。やがて先生が所属しておられた京都が本部(理事長高林三郎先生)の「全国きもの指導者協会」連鎖校の資格をいただいて正式に教室を始めました。

 指導をするようになってからしばらくして、その東京の先生のところだけではなく、色々な所へ行くようになりました。今のようにネットその他で何でも調べられる時代ではありませんでしたので、本や雑誌が情報源です。地元の美容室で短い待ち時間にパラパラと本を見ていた時、着付講習の受講者募集の案内を見つけました。メモをして帰り、直接電話で問い合わせ、参加したこともありました。

 また、やはりこういう形で、美容雑誌から、美容関係で本を出しておられる先生に、自分の現在の立場を名乗りご指導いただけるか問い合わせ、先生に直接個人指導をしていただいたこともあります。今思うと指導する立場で、どれが正しいということはないので、美容の方の着付け方も学びました。

 また、この他にも東京で、時代衣装 舞台衣装の メイク着付け等学びました。こちらは長く通いましたので、各地から受講される先生方との交流もでき、オーストラリアでのショーにも参加し、いくらか広く物事を見られるようになったと思います。

 今思うと、なぜそこまでしたのか、不思議なくらいですが、一つだけ分かっていることは、指導をするということは、自分が学んだことをそのまま右から左へ伝えることではなく、それらを基に、自分で試してみて、納得し、本当に思うことをまとめて軸にして伝えるということです。

 受講者はそのことを理解し、何かの時に、その人達が自分の判断で対処できることであると思っています。誰かの着付けをする場合でも、その方の体型・着物長襦袢の寸法・帯それぞれ違います。そこには、自分の判断というものが必要になってくるのです。

 私はよく、「達成感」、仲間との「達成感の共有」という言葉を使うようになりました。知人から聞いたお話ですが、「成人式に〇〇人を1人で着せたけど、全部違う帯結びをした」 と話をされてる方がいらしたそうです。これは似ているようですが、「達成感」 と 「自己満足」 は違います。着付けに行くメンバーにそのことを改めて話したことがあります。ショーのステージで、何人も並べて見せる時には必要なこともありますが、成人式の着付けは、1人ひとり、その人に最もいいものを選んで着付けをすることが大切です。そのことを再認識するよう話しました。

 着付をするうえで、最近特に気になっていることがあります。それは着物と長襦袢の寸法です。その人に合っていることが大切であることは言うまでもありませんが、最近では特に、いただいた物など寸法が合っていないものがよくあります。丈や身幅ももちろんですが、着物と長襦袢の袖丈・裄、そして意外と気にしないのが袖付けの寸法です。着物の方が短いと、脇で早く開いて、下から長襦袢が出て見えてしまいます。分かっているときは着せる前に留めておきますが、事前点検できない場合は、着せてから縫い留めます。そういうときに応急対処できる判断力が大切です。

 どんな状況においてもその方に合った着付をできること。そこに生まれるのが、自己満足ではなく、達成感です。そのことを伝えられたらと思います。

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渡部捷子

渡部捷子へのメールは watanabe@kazami.com まで

 
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